まるしあ 3日目「目の前に戻る」

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まる

朝から少し心が落ち着かなかった。

今日は工房の日。
いつもなら自然に話せるユリと、なぜか会話のタイミングが合わない。

話しかけようと思う。
でも言葉が出てこない。

「何か変なことを言ってしまうかもしれない。」

そんな考えが頭の中をぐるぐる回る。

以前のまるなら、そのまま一日中そのことばかり考えていた。

しかし今日は違った。

「今はこの作業をやろう。」

目の前の仕事へ意識を戻す。

一つ終わる。

また一つ終わる。

少しずつ頭の中の雑音が小さくなっていく。

「まぁ、今日は話せなくてもいいか。」

そう思えた瞬間、胸の力がふっと抜けた。

あきらめる。

逃げるのではない。

無理に動かそうとするのをやめる。

その結果、不思議と午後には気持ちが軽くなっていた。

そして休憩時間。

佐藤さんと他愛のない話で笑い合う。

気づけば今日は、ちゃんと楽しい時間もあった。

帰る頃には思う。

「100点じゃない。でも95点くらいかな。」

そんな満足感が静かに残っていた。


ユリ

今日はまるが少し静かな気がした。

何か考え事でもあるのかな。

そんなふうに思いながらも、自分も作業に集中する。

無理に話しかけることはしなかった。

人には人のペースがある。

また自然に話せる時が来るだろう。

そう思っていた。


佐藤さん

午後になると、まるの表情が朝よりずいぶん柔らかくなっていた。

「今日は調子どう?」

何気なく話しかける。

すると、まるも笑顔で返してくれた。

たわいもない世間話。

笑い声。

特別なことは何もない。

でも、そんな普通の時間が心地いい。

「今日は楽しそうでよかった。」

佐藤さんはそう感じていた。


カズヤ

今日はまるが自分で立て直しているように見えた。

以前なら焦って空回りしていた場面でも、今日は違う。

静かに作業へ戻り、自分のペースを取り戻していた。

「なんか最近、雰囲気変わったな。」

そんな印象を持っていた。


コロボックル

今日も、まるは一つ学んだ。

思い通りにならないことは、人生には必ずある。

でも、目の前のことに集中すると、心は少しずつ今へ戻ってくる。

そして、手放した頃に、自然と世界はまた動き始める。

今日まるが手に入れたのは、

「思い通りにしようとする力」ではなく、
「思い通りでなくても幸せでいられる力」。

その小さな成長は、誰にも気づかれないかもしれない。

けれど、その積み重ねこそが、まるの歩く道を少しずつ穏やかなものへ変えていくのだった。

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