まる
朝から少し心が落ち着かなかった。
今日は工房の日。
いつもなら自然に話せるユリと、なぜか会話のタイミングが合わない。
話しかけようと思う。
でも言葉が出てこない。
「何か変なことを言ってしまうかもしれない。」
そんな考えが頭の中をぐるぐる回る。
以前のまるなら、そのまま一日中そのことばかり考えていた。
しかし今日は違った。
「今はこの作業をやろう。」
目の前の仕事へ意識を戻す。
一つ終わる。
また一つ終わる。
少しずつ頭の中の雑音が小さくなっていく。
「まぁ、今日は話せなくてもいいか。」
そう思えた瞬間、胸の力がふっと抜けた。
あきらめる。
逃げるのではない。
無理に動かそうとするのをやめる。
その結果、不思議と午後には気持ちが軽くなっていた。
そして休憩時間。
佐藤さんと他愛のない話で笑い合う。
気づけば今日は、ちゃんと楽しい時間もあった。
帰る頃には思う。
「100点じゃない。でも95点くらいかな。」
そんな満足感が静かに残っていた。
ユリ
今日はまるが少し静かな気がした。
何か考え事でもあるのかな。
そんなふうに思いながらも、自分も作業に集中する。
無理に話しかけることはしなかった。
人には人のペースがある。
また自然に話せる時が来るだろう。
そう思っていた。
佐藤さん
午後になると、まるの表情が朝よりずいぶん柔らかくなっていた。
「今日は調子どう?」
何気なく話しかける。
すると、まるも笑顔で返してくれた。
たわいもない世間話。
笑い声。
特別なことは何もない。
でも、そんな普通の時間が心地いい。
「今日は楽しそうでよかった。」
佐藤さんはそう感じていた。
カズヤ
今日はまるが自分で立て直しているように見えた。
以前なら焦って空回りしていた場面でも、今日は違う。
静かに作業へ戻り、自分のペースを取り戻していた。
「なんか最近、雰囲気変わったな。」
そんな印象を持っていた。
コロボックル
今日も、まるは一つ学んだ。
思い通りにならないことは、人生には必ずある。
でも、目の前のことに集中すると、心は少しずつ今へ戻ってくる。
そして、手放した頃に、自然と世界はまた動き始める。
今日まるが手に入れたのは、
「思い通りにしようとする力」ではなく、
「思い通りでなくても幸せでいられる力」。
その小さな成長は、誰にも気づかれないかもしれない。
けれど、その積み重ねこそが、まるの歩く道を少しずつ穏やかなものへ変えていくのだった。


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